最近ではボクシングや総合格闘技などが流行っていますが、忘れちゃいけないのはプロレスの存在。
格闘技が真剣勝負なのはもちろんですが、それらと比較して「プロレスなんてやらせでしょ?何が面白いの??」とか言われているのをよく耳にします。
この記事では、プロレスはどこまでがやらせで、どこが見どころで、どうやって楽しんだらよいのかを解説したいと思います。
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- プロレスはやらせ?
- 勝敗について
- どこまでやらせなのか?
- プロレスはやらせなのに、何が面白いのか
- ルールについて
- プロレスは、どうすれば試合終了となるのか
- プロレスの試合形式について
- プロレスにおける反則について
- 総括:プロレスはやらせなのに面白い理由
- プロレスはやらせ?
プロレスはやらせ?
戦後から昭和の時代にかけて、プロレスは真剣勝負だとされていました。
しかし今では、ブックやアングルという言葉で、ある種のシナリオやキャラ作りが存在していることは暗黙の了解とされています。
実際には、試合のどこからどこまでがシナリオに沿って展開されているのでしょうか。
勝敗について
プロレスの勝敗は、原則あらかじめ決まっています。
試合という点ではなく、長い興行の中でストーリーとして線でとらえて、観客がもっとも楽しめる展開を模索して決めているのです。
そういった大きい流れの中で、観客のリアクションを観察しつつ、人気選手の後押しをしたり、悪役(ヒール)をより魅力的に引き立てたり、キャラクターが生まれてきます。
今回は負けることにして、次回はそれをリベンジして勝つように組み立てよう等、観客に満足してもらえるように真剣に検討がなされているということですね。
とはいえ、選手も野性味あふれるタイプの人たちですから、会社が定めたシナリオを無視して、いろんな意味でリスクを背負い、真剣勝負を仕掛けた例も少ないながら存在するとされています。
会社でも反骨精神あふれるタイプのサラリーマンだと、似たような人がいるかもしれませんね 笑
ブック破りという用語がありますが、ファンはその真偽も含めて、プロレスを楽しんでいるのです。
有名なところだと、以下の試合はブック破りなんじゃないかとウワサされています。
前田日明選手vsアンドレ・ザ・ジャイアント
アンドレがブック破りで前田選手を潰しにかかってきた際に前田選手が報復したとされる試合。
力道山vs木村政彦
力道山がシナリオを破り、無防備な木村に対して全力で攻撃を仕掛けて押し切ったとされる試合。
橋本真也vs小川直也(第三戦)
3回目の対戦となった両雄。橋本が真剣勝負を仕掛けた結果、小川に返り討ちにされたとされる試合。
どこまでやらせなのか?
勝敗と同様、大まかな試合展開についても、通常はやはりシナリオがあるものとされています。
たとえば人気選手の必殺技があって、それを観客が見たいのが明らかな場合、序盤は出さずに中盤と終盤に1度づつ必殺技を出す等です。
しかし連日に渡る数えきれない数の興行をこなす上で、細かい点まですべてを事前に取り決めておくのは不可能に近いでしょう。大まかな流れ以外は、会場の空気感やその日のテンションによって選手同士のあうんの呼吸で取り運ばれていきます。要は、アドリブ性もかなり高いと考えてよいでしょう。
大枠の流れだけが決められており、その枠組みの中で各選手が自分の魅力をアピールしていく、そういった即興性がプロレスの魅力の一つでもあります。
また観客が見守る中、ケガ等のアクシデントは日常茶飯事のため、状況に応じてシナリオを修正することが必要なケースもあるでしょう。
たとえば小島聡選手と天山広吉選手の試合では、天山選手がアクシデントで脱水症状となったため、勝敗のシナリオを覆して、小島選手が勝利したとファンの間では言われています。
プロレスはやらせなのに、何が面白いのか
結論としては、プロレスはレスラーが文字通り命を削り、全身全霊で喜怒哀楽を表現する至極のエンターテイメントの一つだと言えるでしょう。
日ごろから極限まで自身を鍛え上げる。ファンが盛り上がれるように普段の言動から気を配る。自身は慢性的な怪我やダメージを抱えつつも、そんなことは微塵も感じさせないように、魂を込めたパフォーマンスをアドリブを交えて披露する。
その姿勢はまさしくプロフェッショナルであり、即興性の高い舞台演劇やジャズなど、他のプロフェッショナルな表現形態とも通ずるものがあります。
選手自身がシナリオの存在を明言することはありませんが、それは嘘をついているのではなく、プロレスという舞台を構成しているプロフェッショナルとして口に出せないからです。
たとえば夢の国ネズミーランドのキャラクターの着ぐるみの中にはアルバイトの人間が入っているとか力説されても、夢の国の人は「中に人間が居る」とか「中には人間が居ない」とか、反論できないですよね??
外野から寄せられる心無い声に対して、選手たちのもどかしい気持ちが痛々しいほどわかりますね。
さらに言えば、ボクシングや格闘技だって、勝敗やテクニックだけを競っているのではありません。
日本ボクシング史上もっとも人気があった一人である辰吉丈一郎選手などは、もちろん技巧的にすばらしい選手でしたが、決して欠点も少なくない選手でした。
しかしながら、試合を通じて透けてみえる漢気、勇気、繊細さ、生き様・・・。
バトルマシーンのような機械がただ精密に戦うのではなく、生身の人間が身を削りつつ表現する情熱に観客の感情を揺さぶる何かがあるからこそ、そこまでの人気選手となったのです。
それを裏付けるように「試合は作品である」と辰吉さん自身も公言しています。
プロレスの熱狂は観客を巻き込み、選手たちと共に作り上げる至極のエンターテイメントを作り上げます。
ある種、痛ましいほどまでに肉体性を伴うリアルな芸事の一種だと言えるでしょう。
これだけ長年に渡って世界中で人々の支持を得ているのは、当然ながら理由があります。
その証拠に、アメリカで大人気を博しているプロレス団体WWEは途中からシナリオの存在をオープンにしていますが、その人気は留まるところを知りません。
WWEはニューヨーク証券取引所に上場しているため、事業内容を明確に公開する必要もあって、シナリオの存在を明らかにしたんですね。
シナリオが存在しているという点のみで価値が無いかのごとく判断するのは、まだプロレスの神髄を理解していないために起こることだと思われます。
WWEは日本とはケタ違いのレベルで集客力のあるコンテンツですので、ファンの楽しみ方もこなれていると言えるでしょうね。
国民性の違いもあるとは思いますが、日本でもさらにプロレスへの理解が深まって欲しいものです。
そして願わくば、せっかく命をかけて取り組んでいる選手たちの余計な葛藤が取り除かれるとよいですね!
ルールについて
プロレスには明確なルールはありません。
ボクシングやキックボクシング、総合格闘技(MMA)でも団体ごとに微妙なルールの違いはありますが、プロレスのルールはさらに自由度が高いと思ってください。
しかし代表的な試合形式は数パターン存在しているので、それらをザックリと把握しておくと、観戦する際にルールを把握しやすいと思います。
プロレスは、どうすれば試合終了となるのか
プロレスの決まり手には様々なパターンがありますが、以下が基本の決まり手となります。
フォール
固め技・抑え込みを用いて相手の両肩をマットに着けさせた状態で、3カウントキープできると勝利です。
この状態で3カウント数える間に、抑え込まれている方は相手を振りほどいて肩を地面から離す必要があります。
ギブアップ
関節技や絞め技などで、相手がギブアップすると試合終了です。
なお、ロープブレイクといって、間接技や抑え込まれた状態で技をかけられている方がロープにタッチすることで仕切り直しとなり、技を解いて解放するルールが存在します。
その他、以下のパターンも存在しています。
ノックアウト
ダメージを受けて寝転がり、10カウント立ち上がれないと試合終了です。
レフリーストップ
関節技や絞め技などで、ギブアップしなくてもレフリーがもうダメだと判断すると終了です。
リングアウト
リング外に出てしまい、10~20カウントしても戻ってこない場合。場外が許されるカウント数は団体による。
反則負け
基本的にプロレスはルール外の反則が即NGというわけではなく、暗黙の許容される範囲があります。
しかしそれすらも逸脱すると、反則負けとなることもあります。
反則については、また後ほど詳しく解説します。
いずれにせよ、上記のいずれかに当てはまった時点で勝敗が決します。
プロレスの試合形式について
続いて、試合形式について解説します。
試合の人数について
1対1のシングルマッチが中心ですが、2対2や3対3のタッグマッチや、さらに複数人で戦うバトルロワイヤル形式など、特にこうでなければダメだという決まりはありません。
そのため、ハンディキャップマッチとして1対2など変則的な条件でおこなうこともあり得ます。
試合の時間について
15分、20分、30分、45分、60分など明確に時間が定められていることもあれば、時間無制限のこともあります。
特に決まりはありませんが、タイトルマッチなど重要な試合については60分でおこなわれることが多いです。
とはいえこの点については、その都度明確に定められているため、特に迷う難しいことは無いかもしれませんね。
1本勝負と3本勝負について
1本勝負は、普通に一度勝てば勝敗が決する試合形式です。
近年はあまり見られませんが、以前は3本勝負が採用されることもありました。
別の日に3回試合するのではなく、3試合して勝ち越した方が勝利という形式です。
間延びした展開にやりやすいことや、テレビ局の方針転換によって、今では珍しい形式となっています。
その他の試合形式について
大仁田厚選手の代名詞だった有刺鉄線電流爆破デスマッチなど、危険な舞台装置や各種凶器などで流血するような激しい要素を取り入れたデスマッチという形式があります。
正確にはデスマッチは必ずしも危険性を増すという方向性に限らず、レスラー同士が完全決着をつける際、時間無制限で試合をおこない、ケリをつけるというニュアンスもあります。
たとえばアントニオ猪木とマサ斎藤の源流島の決戦では、レフリーや観客、ルールすら無しの時間無制限勝負でした。
特別な舞台装置を用意することで、特別な勝負であることを演出しているとも言えます。
プロレスにおける反則について
プロレスでは攻撃手段として、締め技や関節技といったサブミッション、投げ技に加えて、蹴りなどの打撃が認められています。
一方で、パイプ椅子などを用いた凶器による攻撃、目つぶしや急所への攻撃、さらには意外なことに拳を握った状態でのパンチも禁止です。
まぁ、グローブもつけずに素手の状態でパンチをしたら、フツーにダメですよね・・・。
しかしこれらの反則行為も、レフリーが5カウントを数える間であればオッケーなので、実質なんでもアリとなっていると言えるでしょう。
つまり格闘技のように単純に競技上でNGという話ではないのです。
いったんルール上でアリ無しの線引きを置いた上で、それをあえて逸脱するのかという点も、レスラーの感情表現の一種として成立しているということです。
総括:プロレスはやらせなのに面白い理由
プロレスは勝敗から大まかな流れまで、シナリオが用意されている。
しかしそこが問題なのではなく、シナリオがあるという前提がありつつも、その上で選手が真剣に身を削りながら表現する芸事であり、顧客とのコミュニケーションであり、高いアドリブ性が要求される高度なエンターテイメントであると言える。
記事でご紹介した基本的なルールを把握したら、食わず嫌いをせずにぜひ一度、プロレスの世界を覗いてみることをおススメする。
格闘技が善でプロレスが悪という二元論ではなく、格闘技にある情熱や人間味、憧憬といったものを凝縮して、エンタメとして昇華させたスタイルがプロレスの目指すところであると言える。
この奥の深い芸事を楽しめるように読み解いていくのも、ファンとしての本懐の一つなんじゃないでしょうか。